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私たちの追跡 Vol.13

先日、山下達郎の配信シアターライブ1984〜2012を見た。

 

山下達郎のライブ映像はいまだかつて商品化されたことがなく、

この作品も劇場に足を運ぶこと以外に観る方法はなかった。

 

2019年にファンの熱い要望によって2週間アンコール上映が実現し今回に至った。

 

伝説的なLIVEを家で楽しめる喜びと共に

音楽や調和、ハーモニーは素敵な時間を与えてくれる。

達郎さんの音楽から、あらためて感じたことだった。

 

 

 

古代のギリシャ人は美しい神々と同じ裸で競技をしていたという。

男として美しくあることは徳を積むこと。

 

立派な人間になるためには外見の美しさを追求する必要があると考えていた。

ギリシャ人にとって人間の姿は神から授かったもので、美しい人間の姿は

神々が喜ぶものと考えていた。

 

 

 

 

「美しい男性の裸は神も喜ばれる」という思想を背景に

「美=善」という価値観や信念があった。

 

 

そうした背景から古代ギリシャでは主に

男性美を追求したギリシャ彫刻が発展し

まずは「アルカイック時代」と呼ばれる様式が生まれた。

 

 

 

「クラシック=古典・規範」と言われる

クラシック時代の基礎をつくったのが、このアルカイック時代。

 

 

アルカイック時代の彫刻は直立したポーズが特徴的で、

代表する彫刻が男性裸体像のクーロス。

 

 

 

エジプト美術から影響を受けた直立の姿は

正面性という法則のもとに制約され、素朴な美を感じさせる。

 

 

その制約によってつくられる美が独自性につながっていった。

 

 

自然を観察することで見つけた秩序と比例という規則。

ギリシャ人には万物には秩序がなければならず、

秩序があることは善にして美であると、本来的に考えていた。

 

そして秩序はシュンメトリアであると考えた。

 

シュンメトリアは

ハルモニア(ハーモニー)、均衡を意味し、

釣り合い、バランスのこと。

左右が相似でなくバランスを保てば良い。

 

 

 

 

現在の左右対称をさすシンメトリーと言う言葉は

シュンメトリアから変化している。

 

 

正面性を重視する左右対称は最も単純なシュンメトリアになる。

 

 

 

 

正面性は現在の建築でいうファザード。

ファザードはフランス語に由来し

英語ではface、顔にあたる。

 

 

この単純な秩序の中

彫刻のポーズは抑制され、型の変化は少ししかなかった。

その制約のもとでつくられる美を、アルカイック時代の作家たちは追求した。

 

 

ではギリシャ人は人間の肉体を、どのように理解し、美を認めていたのか?

ギリシャ人は人間の体を部分から構成されるものとして理解していた。

 

 

 

それは頭部、胴部、脚部、と言った大きな部分だけでなく

 

頭、額、顎、胸、腹、足、腕といった部分

さらに小部分の筋肉や骨などに

よって成り立つ生命体であると・・・

 

 

そして、それぞれの部分が役目にふさわしい形態をとることが

真でもあり美だと考えた。

 

 

そのような部分が結びつき、また部分と部分

部分と全体とが、正しい関係、適正な配置にあるときに

一個の生命体が生まれる。

 

 

 

この正しい関係が均衡=バランスであった。

 

 

そのバランスをつくるうえで必要な道具が

幾何学を使って図ること(測量)だった。

 

 

 

 

そしてその幾何学によって比例という秩序が認識され

シュンメトリアは正しい関係に導く手立てだった。

 

 

古代ギリシャの考えをまとめたウィルトウィウスさんの建築書は

建築についてのシュンメトリアの重要性を語っている。

 

建築の成り立ちとしてシュンメトリアをふくめた

6つの基本コンセプトがあると語っている。

 

タクシス(整列的な秩序)と言われる中に

オールディナーティオー「それぞれ部分が標準的であること」

ディアシス「配置」

ディスポシティオー「質的秩序一般の原理」

エウリュトミア「質的秩序に基づく美的構成」

シュンメトリア「量的秩序」

デコル「似合わしさ、相応しさ」

 

 

人間の造形的な理想化を図ることで

神々とつながり、表現できると考えた古代ギリシャ人は、

人体の比率的、そして解剖学的正確さを追求し

忠実に再現を目指す自然主義へ向かった。

 

 

アルカイック時代末期からクラシック時代への

わずか半世紀ほどの間に起きた変化は

素朴な美から永遠性をも感じさせる崇高な美へと昇華した

美術史上、奇跡的な変化だという。

 

 

古代ギリシャに多大な影響を受けた

現代スペイン巨匠の画家アントニオ・ロペス・ガルシアさんは言う。

 

「ギリシャ美術は、千年も続いた素晴らしい芸術です。

ギリシャ美術は、人が成長するように成長するのです。

全ての西洋美術はギリシャ美術から発しています・・・」

 

 

古代ギリシャは

どこか、昔の日本に似た側面がある気がする。

 

その土地に根付いた自然の中で暮らし、

自然と共生する中で学んんでいた。

そして、想いと願いを込めて真・善・美を創造していた。

 

 

 

そこから独自性という”オリジナル”が生まれ文化になった。

 

そしてその文化の中で人とつながり新たな創造を積み重ねた。

 

 

それが人間の成長として必要だということは

古代も現在も変わらない。

 

 

 

 

続く