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私たちの追跡 Vol.15
はやいもので龍ヶ崎に来て6年。
地域社会を知るには自転車に乗るのがいいとすすめられ去年から乗り始めた。
車では通らない道や土手を通ったり、歩きや車では行きにくい場所に目が向いたり
地域の人の暮らしを実感できるようになってきた。
体をつかって足元の歴史を散策すると、生きたつながりが見えてくる。
古代ギリシャ、ローマやルネサンスでは、人はどのようにして
世界を感じていたのか?
画家、彫刻家、建築家、数学家、音楽家、文筆家・・
それぞれが専門を持ちつつも、分野を横断する貴重な接点が大切だと考えていた。
その接点は境界領域(共通領域)と呼び、
歴史とのつながりや、視野を広げる重要性を主張したのが
ルネサンスの万能人達も影響を受けたウィトルウィルスさんだった。
最近読んだ更科功さんの「美しい生物学講義 」という本には
こんなことが書かれていた。
「レオナルドが生きていた頃は”地球が生物であった”という考え方が人気があった。
モナリザを描いた理由の一つは、地球と人間が似ていることを示すためだった。
女性と地球を対比させて描き、女性の曲がりくねった髪の後ろには
曲がりくねった川が流れている・・・レオナルド自身が手稿に書き残こしている。
人間の血液に相当するものが水。骨にあたるものは岩石・・レオナルドは自分で証拠を見つけ納得したかった・・」
興味深くユーモアに富んでいて、文部科学省的な生物学の話しではなく、
地球、美術、ヒトと生物学をつなげて、身近に感じさせてくれる面白い本だった。
モナリサを絵画の象徴的な存在として美術の歴史からみることは、日本では一般的。
だけどもし、生物の教科書にモナリザが出ていたら、現代の環境問題のシンボルとして
モナリザやレオナルドさんが語られるかもしれない・・・・
地球と女性を類似させてみることができる世界なら、
闇雲に森林を切らないで、地球が喜ぶような森の切り方を考えるかもしれない・・・
想像を広げてくれる瞬間は、専門外のことや与えられた教育以外のことに触れた時が多い。
20代の頃に出会ったイタリア人のカラーリストは、志望のきっかけを
「子供の頃から道具を持って色を塗ることが大好きだった、
だから髪という素材に色を塗ることはエキサイティングだと思ったの・・・・」
と話した。
彼女の「色を塗る」という世界から見ていた美容は、
メイクはもちろん、画家やペンキ屋、左官屋、塗装屋、パティシエ、インテリアデザイナー、フローリスト・・と
「色」という共通する領域で自然につながっていた。
日本の教育では発想しにくいけど、こういう考えの美容師が増えたら
”すごく美容が楽しくなる”とその時感じた。
日本も、江戸時代の初期の宮本武蔵は五輪書で
「諸芸にさわる」ことの必要性を自身の経験から語っていた。
「諸芸にさわる」ことというのは
いろんな分野に関心を持つことで、視野を広げるということ。
自分の専門分野以外のことに無関心である人は
創造的な仕事をすることができないと考えていた。
一見、専門とは無関係に見えても、地下茎のようなものでつながっていることが多い。
武蔵は諸芸にさわることを、剣術を探求するために吸収した。
諸(もろもろの)芸(技術)に触れることは、
生きた感覚につながり、自分の専門を深めてくれる。
そして、その生きたつながりはモチベーションを高くしてくれながら
日々に広がりを持たせてくれる。
情報は変わらないけど
生きたものは常に変わっていく。
だからこそ数百年経っても
平家物語や方丈記に共感できるのだと思う・・・
続く
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