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私たちの追跡 Vol.18

先日行った柏の葉の本屋さんの2階は、教育系の絵本や参考書、最近流行りのプログラミング教材などが多くあり、今の学校教育のトレンドなんだなぁっと思いながら眺めていた・・・

なかでも目のついたのは、心や思いやりのことについて書かれた本と、手仕事の紹介をした本が特集されていたこと・・知識として知ることももちろん大切だけど、体験や感覚を通して感じる楽しさも知ってほしい・・・。

 

全てのものが瞬く間にプログラミングでき、アルゴリズム化される現代・・・・

日常の労働はあらためて貴重で有難い。

 

さて私たちの追跡18に・・・

古代に生きた人や職人の考え方から、「観る力」というものを改めて学習していていくと、参考になる技術がたくさんある。

 

デッサンや略図的にスケッチするスキルは、頭の中にあるイメージを実際の視覚情報として表現するスキルで、これは一生磨いていける技術のひとつ。イメージを手が写し出すという技術は、ヘアデザインをつくることにも直結する・・

 

もう一つ訓練していきたいこととして美術でいうディスクリプションがある。

 

ディスクリプションはギリシャ語のエクフラシスから由来する言葉。

略図などを使わずに、言葉だけで説明すること。視覚情報を言語情報に変換する技術。

かんたん言えば、ある作品を見ながら言葉を使って説明する作業。いろいろと応用ができると思う。

 

まずは画面のどこに何が描かれているのかという区分を伝え、画面を構成している数や量、配置、それぞれの形や色、特徴を伝える。

 

ヘアデザインをつくる上でも、基本の頭部のバランスを基準に、首、肩、胸くらいまでの区分を使い、長さや、ウエイトの丸みの位置、全体の量感、ライン、前後左右上下の関係などを踏まえた配置・・

 

そういった特徴を客観的に捉えて言葉にしながら観ることは、一つのディスクリプションスキルだと思う。

そうすることで、受信者であるお客様の希望に対して、客観的で物理的な側面から情報共有することができる。

 

またディスクリプションスキルには、アイコン、記号(サイン)、シンボルや指標から、伝えたいメッセージを観るという方法がある。西洋の古典絵画のメッセージにはギリシャ神話やキリスト教の理解が必要になってくるから内容を深く理解していないとなかなか難しい・・・これには相当の時間がかかる・・・。

 

ディスクリプションのサインやシンボルなどの考え方をヘアデザインをつくることに応用するときには、お客様一人ひとりの時代性や社会環境、価値観などに寄り添うために、それぞれが固有のイメージとして持っているサインを常に仕込んでおく必要があると思う。

 

先日も80代後半のお客様と話していたら、私の憧れの人は「祐ちゃんなの・・石原裕次郎・・」

 

「夜霧も今夜も有難う・・知ってる?」と言われて・・・・

裕ちゃんはわかるけど、夜霧・・の曲は・・・イメージできなかった・・・。

すぐにユーチューブで検索して・・お客様に見せたら、あっという間に青春時代の記憶がよみがえり、いろんな話しを聞くことができた。

音楽は時代を象徴するシンボルそのもので、人の感覚に残る歴史をまとめてくれる・・

 

 

古代では言葉を読むことは、誰もができることではなかった・・

そのため絵画は言語情報を補う伝達手段として使われていたために今よりも日常的だった。

誰かに何かを伝えるためのコミュニケーションの手段として、スケッチによる略図やデッサンを描くことは身近にあった。

伝えるための情報として、音楽のように個人的な感情に働きかける精神的側面の情報と、物理的側面に基づく誰でも同じような事を想像できる、客観的な情報があると考えたのは、今も昔も必要な力のように思える。

古代や何世紀か前までは、人と人とがつながる手段として絵画や美術は日常的だった。

 

そんな日常の中の労働は、自分を知り、世界を知ることにつながる。

 

自発的な労働から感じとる情報は、諸々の経験になり趣につながる気がする・・・

趣から感じる様子や、心の動きによって響きが生じ、その響きに合った音は言葉や表現の道筋へと導いてくれる。

 

 

続く