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私たちの追跡  Vol.21

11月になり、クリスマスの飾りが方々で目に入る時期になってきた。

年内にここまではやっておきたいという勢いは師走とは違って出てくる月・・

 

今回も今年の追跡を振り返りつつ気がついたことを紹介する回・・・・

 

 

ヘアカットが生まれる前の時代に戻って学び直してみるという

「超主観的古典主義」は、時代に左右されずにカタチをつくるために必要な

造形的で美術的な視点からの追跡・・・・

 

 

美容以外の部分(絵画、建築、彫刻)のフィルターを通じて観察することで、

ヘアデザインを見直し・・・

「つくること」に共通する考えを古典を使って深めていく・・

 

 

数学的、幾何学的な側面から構造という骨組みがあり、その構造は自然との関係から生み出された秩序。

 

比例や測ることにより、美という秩序(調和)に近づき、理想のプロポーションが生まれる・・・

そんな話が前回でした・・・

 

 

そういった比例や構造というデザインの構成要素を具体的な流れ(作業)につなげるためには何が必要か?

 

私たちのヘアデザインに使う3次元の技術には、どのようなつながりがあるのか・・・

数学や比例という1次元を表す道具から幾何学という2次元をあらわす道具ができ

その道具とどのようなつながるのか・・・・

 

次元は英語でdimension

dimensionのもとの意味は「正確に測る」「完全に測る」ことにに由来するという。

今では「寸法」や「面積」という意味や次元という空間の広がりのことさす・・・

そんなことを想い起こしながら進んでみたい・・・・

 

その助言を与えてくれたのががルネサンスの万能人レオン・バティスタ・アルベリティさん。

自身の建築論の中でこんな風に建築を定義している。

 

 

「・・・・建築とは、人体を始めとする様々な物体に似て

輪郭(lineamentum)と、それに従う物質(materia)という二つの構成要素から成り立つものである・・」

としながら、これを広がりある考えで捉えながら、物質を構造に置き換えて

建設に関すること(具体的な手段)についても定義している・・・

・・・なかなか解釈が難しいけど・・・・・

 

私はこんな風に考えてみた・・・

人間のフレームにあたる骨格が美しく保たれていれば、身体のさまざまな機能である=”物質”も理想的に配置されて

その人の身体の姿=”輪郭”が美しなる。いわゆる健康なカラダ・・

骨が歪んでいれば、それに伴って内臓の位置や筋肉のつき方にも影響し、理想の身体のプロポーションから遠ざかっていく・・・・・・

 

 

またアルベルティさんは自身の「彫刻論」でも、建築と彫刻は”輪郭と物質”という二つの共通概念によって全く同様に定義している。

 

そして”輪郭”は主に作品の創意工夫を行う”技術者の頭(心)の領分”であり

対して、”物質”はそうした創意工夫に従い作品の制作を実際に行う技術者自身や”職人の手の領分”にあるという。

 

 

さらに輪郭は建築や彫刻に特化されるものではなく、物体を伴わない絵画においても同様だとしている。

 

”輪郭”は万物の造形を始めとする様々な物の道理を、根本的に解き明かしてくれる”指標的”な要素になる。

だからこそ、本物や自然からの模倣が大事だとアルベルティさんはいう。

 

 

そして輪郭を頭(心)の中から具体的作業として再現することにより、輪郭自体に

不備がないかどうか、かなり時間をかけて調べる必要があるとしている。

 

 

そうした輪郭を扱う作業が職人の手だとし、その技術こそが「透視図法」だと語っている。

 

 

 

 

アルベルティさんにとって透視図法は本来

”目に見えない不可視の輪郭を目に見えるように顕在化・視覚化させる唯一の手立て”だった。

 

この”見えないカタチを視覚化させる”手立てとしては数学的、幾何学的道具が必要になっていき

構造から輪郭を再現することができる。

 

 

 

 

 

数学的、幾何学的な道具を使って見えないカタチを見えるようにする構造的な手立ては

コルビジェさんが拠り所にしたトラセ・レギュラトールにもつながる。

 

トラセ・レギュラトールは造形構成(建築、絵画、彫刻)に、その比例において大いなる正確さを付与する幾何学的または算術的手段である」とコルビジェさんは語っている・・

 

カタチを正確につくるために、規律あるルールを使ってデザインしていくこと・・・

 

コルビジェさんは師であるオーギュスト・ペレから「建築は数学を学ぶべきであり、それは構造という骨組みである」という教えに導かれ「生命を得た建築」として古代ギリシャのパルテノン神殿に古典的規律への感情を覚えた。

 

 

そうした古典的規律から造形上の視覚的俊敏さをつくることができる・・・

 

 

コルビジェさんは著書でこんなことも語っている・・

「完全な仕上げ」の問題に挑むには〈標準〉の設定から始めなければならない。

パルテノンはある標準に精選(特に良いものだけを選び出すこと)を加えた産物である。

標準とは論理と分析と緻密な研究を必要とし、正しく設問したところに成立する。

実験が最終的に「標準」を定着させる・・・」

 

 

自然との関係から生み出された古代ギリシャの標準は、シュムメトリアやカノンをつくった(vol.19)。

そしてコルビジェさんは古典的規律と同じように、自分自身がめざす建築のための規律をつくり、

トラセ・レギュラトールを指標線にした。

 

 

アルベリティさんがいうような造形の構成要素である輪郭と物質は

見えないカタチを視覚化するための手立てを用いることで、”単なる外形を形作る想定のカタチ”から

理想とする自然な線へと導かれる。

 

 

そういった理想の造形へ向かっていく手立ては、時代が変わっても、人が変わっても受け継がれていく道。

 

造形の基本を成す輪郭は、カタチを正確に測るための秩序あるルールから導かれる。

 

そしてその秩序あるルールを実現させることが職人の手・・・

 

 

では、秩序あるルールをどのように使ったら輪郭というアウトラインから自然という生きた造形を

創造できるのか?

 

まだまだ追跡は・・

続く