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私たちの追跡  Vol.26

今年はどんな1年だったか?

新型コロナ禍、気候変動、デジタル化、人口減少・・・社会が大きく変わる中、それぞれがどんな道を歩むべきか?

 

私たちの追跡をスタートさせて、自分自身の時間を超えたところにある技術の源流を追跡することは、

世界が広げ

常識を具体的に見直すことを促し

変化を起こしていくことを強く実感させてくれた。

 

そして変化をしていくためには、自然というものが何よりも大切だということ・・・・・・

その自然を秩序という調和で表現するために、古代ギリシャ人は芸術を使い、その中に様々な方法を考えだした。

 

その芸術の骨格は数学的、幾何学的に構造を捉えることが基本にあり

建築、彫刻、絵画に共通する基本だということ・・

 

 

 

そうした境界を超えても共通する基本がある。

それがコモンセンスという共通感覚なのだと思った・・

 

建築からインスピレーションを得たと言われるヘアカットも境界を超えたところから眺めることで足りないものが

見えてくる・・・

 

 

古代ギリシャでは自然の秩序を比例という調和で表現するために、数学や幾何学という方法を使い、定規とコンパスを多用した。

 

ルネサンスの万能の人アルベルティさんが言っているように

古代人たちは、”模倣すべき手本”を持っていた。

 

それから学ぶことができたので、あの至上な技術の知識に到達することもあまり困難ではなかった・・

 

だけどもギリシャにおいて価値観が激変した

後4世紀以降のキリスト教時代と15世紀以降のイスラム教時代には

偶像を排斥する教義と神々を理想的な人物像として表現する「神人同形主義」により破壊の対象になった・・

 

現代、私たちが見ている古代ギリシャ彫刻は、ほとんどが古代ローマ時代につくられた

ローマン・コピーが多いと言われる・・

 

 

ローマに制服された古代ギリシャの美術の多くはローマに運ばれ、公共の場などに陳列されたりした。

そうした状況から盛んになったのが「原作」に変わる精巧な「模作」の制作だった。

 

ポリュクレイトス原作 ドリュフォロス

 

皇帝や知的階級を中心に裕福なローマ人による「ローマン・コピー」の需要がきわめて高かったと言われている・・・

 

そう言った背景がある中で、「模作」を「原作」の代用として美術様式をたどる前提では、

極めて精確に原作を写していなければならなかった。そうした意味で大切な存在になるのが

”Exakte Kopie(精確な模作)”と言われるローマン・コピーだと言われる。

 

 

 

ではどのようにしてローマン・コピーはつくられたのか・・・・・

 

その一つに”星取り法”と言われる技法がある。

 

星取り法とは、コンパスなどの計測器具 を用いた彫刻の形態の転写技法。

原型の形態表面に無数に打った点の空間的な位置 を測定した後、他の素材に転写する方法だと言われている。

 

 

 

 

3点で固定した器具の上に設置された自在針で石膏像上の点を追い

用意した大理石を彫りながら、その点を移す。

 

 

 

 

 

星取り法の原理自体は古代ギリシャに起源を持つと言われるが、完成されたのは19世紀の

新古典主義の時代にピークを迎えたと言われている・・・

 

こうした機械的制作法は、その時代の需要と供給を盛んにさせ、ポリュクレイトス原作のドリュフォロスのように

人気のあるものは多くつくられた。

そんなローマン・コピーの作品には時として署名が認めらたという。原作者ではなく模作者に限られていた。

名前は陰になって見落とされるくらいに控えめなのが特徴で、彫られた名前はほとんどがギリシャ人であった。

 

ローマ美術史の中で彫刻に関する限り、ギリシャ人の子孫がもっぱら携わっていたと言われている・・・・

 

この文章を書いていて、数学者の岡潔さんの話しを思い出した。

 

 

数学を通して何千年という時間軸で世界や人間を見ていたという岡さんは

1960年代に書かれた著書の中で「調和の精神がなく科学を発達させると危険な社会になる」と話し

20世紀は古代ギリシャから戦争の多かった古代ローマの時代に入っていると話していた・・

 

 

時代は21世紀。

 

需要と供給システムをつくり科学を発達させ繁栄した古代ローマ人や

ローマン・コピーの時代に至っても、なお彫刻をつくり技術を継承した古代ギリシャ人・・・

 

ローマ人、ギリシャ人・・・時代性や地域性、人種・・・固有に備わる様々な特徴があるのだと思う・・

 

多様性を掲げ持続可能性を連呼する時代・・・

それぞれに元々ある、”固有の強さを生かしあい、調和させる表現”が必要なのだと思う。

 

その基本となるヒントは全て自然の中にある。

 

創るという仕事に携わる者として、追求して行きたい・・

 

 

 

 

 

続く